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Craft Report
約360年受け継がれてきた、京刃物の名匠「京之鍛冶師 義定」
江戸時代中期、京都・東山にて創業。以来、約360年に渡って、刃物作りにおけるその高い技術を代々受け継いできた「京之鍛冶師 義定」。現在は京都南部・久御山町に工房を構え、十代目の山口悌市朗さんと若手の職人二人で、京都では数少ない伝統的な「京刃物」を手作業で造り続けています。
約70年にわたり技術を磨き続けてきた職人魂
十代目の山口悌市朗さんは、幼少期から先代の父の背中を見て育ち、15歳で職人の道を歩み始めました。先代は、戦争から無事生きて帰ってきたものの体を悪くし49歳の若さで他界。悌市朗さんは、27歳で後を継ぐこととなりました。「当時は住み込みの若い者もいたから、とにかく続けなければいけなかった」と振り返る悌市朗さん。約50年前に、戦時中は飛行場だった現在の久御山町に工房を移転。当時は京都にいくつもあった、伝統的な京刃物を造る工房も数が少なくなってきた中で、悌市朗さんは70年以上にわたって「京刃物」を造り続け、2011年には天皇陛下より黄綬褒章を受章しています。現在も家庭用刃物から職人用の特殊庖丁に工芸品などを作るために必要な道具まで、幅広い刃物を製造しています。
切れ味鋭く、長持ちする「京刃物」

京都が都であった地の利を活かし、材料となる上質な砂鉄や玉鋼、包丁造りに欠かせない土や砥石、さらには良質の水などが入手しやすいという環境だったことから、発展してきたとされる「京刃物」。もとは刀鍛冶の技術が、時代の流れとともに家庭用の包丁など実用性の高い刃物を造るための技術として受け継がれてきました。

高温で熱した地鉄と鋼を接合し、ハンマーで叩いて鍛えながら整形していきます。高温に熱せられた鉄の塊を何度も打つ「火造り」が、経験がものをいう難しいポイントのひとつだと悌市朗さん。厚みが均等になるように打ち上げ、包丁の原型となったら、今度は泥を塗って再び高温で熱して、急冷。この「焼き入れ」の工程により、硬く切れ味鋭い包丁になります。

この時に使う泥は、上質な土と松炭を独自で調合したもの。この配合のバランスが義定の刃物が持つ切れ味と美しい色合いを生み出しています。その後は、グラインダーや天然の砥石で鋭く磨き上げて完成。地鉄と鋼を合わせて高温で焼入れし、研ぎ上げた硬度の高い刃物は丈夫で、抜群の切れ味が持続することが特徴です。
変わらない伝統を守りながら、新しい物づくりに挑戦
「義定」では一般家庭で長く使えるものから、有名料亭の料理人などプロも愛用している特殊包丁まで幅広く製造。最近では、海外からの需要も高まり生産が追いつかないほどで、包丁の研ぎの注文も殺到しているそう。また包丁だけでなく、工芸品などを作る上で欠かせない道具に使用する刃物を作っていたり、祇園祭の鉾で使われる金具など、これまでさまざまに手がけてきました。
畳を切るために使う包丁
畳を切るために使う包丁
アウトドア用のナイフ
アウトドア用のナイフ
使い手それぞれの用途や使い方に合わせて材料や造り方も代わり、重さや硬さ、形も多種多様になります。中には、全国で悌市朗さんにしか作れない道具もあるといい、「よく切れる、使いやすいことが大事」とした上で、「包丁だけでなく、注文があればなんでもつくれるようにならないといけない」といいます。この柔軟性にこそ長年の知恵と経験が必要で、若い職人たちにとっても継承が難しいところです。

「義定」に入って18年になる吉浦さんは「まだまだできないこともある」としながらも、初めてのものをつくる時ほどやりがいを感じるのだそう。先日も車の部品を製造するために使う変わった形の刃物のオーダーがあったそう。難しい注文だったが満足のいくものができ、次の依頼に繋がった時には喜びを感じたと話してくれました。アウトドアが趣味ということもあり、アウトドアナイフや持ち運びしやすい手のひらサイズのミニマム包丁など、伝統の技術を活かしたこれまでにない商品も開発。販売すると即完売となる大反響に。「この先も『義定』を続けていくために、今までになかった新しいものを作りたい」と未来への想いを明かしてくれました。

勤めて約15年になる白井さんも、「言葉で伝えづらいところが多いので、数をこなし時間をかけながら習得していくしかない」と懸命に技術を継承しています。「何百年経っても包丁の魅力は切れること、そして生活の役に立つ実用性だと思っています。この無駄を削ぎ落としていく作業が好きで、失敗を重ねながらもひとつの工程の精度を上げ続けていくことに惹かれました。毎日同じことをしていても、精度が上がると技術も上がり、経験が積み重なっていくところが好きなんです」と、悌市朗さんの元で技術を磨きながら充実した日々を過ごしている様子。

京都で受け継がれてきた伝統の技術を活かしながら、時代に合わせて新たな挑戦も欠かさない「京之鍛冶師 義定」。この先も使い手に寄り添い、家庭から世界中の物作りまで、さまざまな場面で欠かせない刃物を造り続けています。
七条にある販売店
七条にある販売店
取材・文・撮影=大西健斗
京之鍛冶師 義定
locationPin京都府
#鍛冶
江戸時代中期、京都・東山にて創業。以来、約360年に渡って、刃物作りにおけるその高い技術を代々受け継いできた「京之鍛冶師 義定」。家庭用刃物から職人用の特殊庖丁、彫刻刀に伝統工芸品などを作るために必要な道具まで、幅広い刃物を製造しています。
Artisans Wanted
Last Updated : 2024/07/31
Representative
山口悌市朗
Established year
1659年
Employees
Location
京都府久世郡久御山町佐山新開地82-1
Awards History
2010年
黄綬褒章
Request Production/Product Development
Each craft manufacturer showcased in "MEIHINCHO" boasts its own distinctive and innovative technology. For those interested in leveraging this craftwork technology for OEM or product development, please don't hesitate to reach out to us.
京之鍛冶師 義定
locationPin京都府
#鍛冶
江戸時代中期、京都・東山にて創業。以来、約360年に渡って、刃物作りにおけるその高い技術を代々受け継いできた「京之鍛冶師 義定」。家庭用刃物から職人用の特殊庖丁、彫刻刀に伝統工芸品などを作るために必要な道具まで、幅広い刃物を製造しています。
Artisans Wanted
Last Updated : 2024/07/31
Representative
山口悌市朗
Established year
1659年
Employees
Location
京都府久世郡久御山町佐山新開地82-1
Awards History
2010年
黄綬褒章
Craft Report
約360年受け継がれてきた、京刃物の名匠「京之鍛冶師 義定」
江戸時代中期、京都・東山にて創業。以来、約360年に渡って、刃物作りにおけるその高い技術を代々受け継いできた「京之鍛冶師 義定」。現在は京都南部・久御山町に工房を構え、十代目の山口悌市朗さんと若手の職人二人で、京都では数少ない伝統的な「京刃物」を手作業で造り続けています。
約70年にわたり技術を磨き続けてきた職人魂
十代目の山口悌市朗さんは、幼少期から先代の父の背中を見て育ち、15歳で職人の道を歩み始めました。先代は、戦争から無事生きて帰ってきたものの体を悪くし49歳の若さで他界。悌市朗さんは、27歳で後を継ぐこととなりました。「当時は住み込みの若い者もいたから、とにかく続けなければいけなかった」と振り返る悌市朗さん。約50年前に、戦時中は飛行場だった現在の久御山町に工房を移転。当時は京都にいくつもあった、伝統的な京刃物を造る工房も数が少なくなってきた中で、悌市朗さんは70年以上にわたって「京刃物」を造り続け、2011年には天皇陛下より黄綬褒章を受章しています。現在も家庭用刃物から職人用の特殊庖丁に工芸品などを作るために必要な道具まで、幅広い刃物を製造しています。
切れ味鋭く、長持ちする「京刃物」

京都が都であった地の利を活かし、材料となる上質な砂鉄や玉鋼、包丁造りに欠かせない土や砥石、さらには良質の水などが入手しやすいという環境だったことから、発展してきたとされる「京刃物」。もとは刀鍛冶の技術が、時代の流れとともに家庭用の包丁など実用性の高い刃物を造るための技術として受け継がれてきました。

高温で熱した地鉄と鋼を接合し、ハンマーで叩いて鍛えながら整形していきます。高温に熱せられた鉄の塊を何度も打つ「火造り」が、経験がものをいう難しいポイントのひとつだと悌市朗さん。厚みが均等になるように打ち上げ、包丁の原型となったら、今度は泥を塗って再び高温で熱して、急冷。この「焼き入れ」の工程により、硬く切れ味鋭い包丁になります。

この時に使う泥は、上質な土と松炭を独自で調合したもの。この配合のバランスが義定の刃物が持つ切れ味と美しい色合いを生み出しています。その後は、グラインダーや天然の砥石で鋭く磨き上げて完成。地鉄と鋼を合わせて高温で焼入れし、研ぎ上げた硬度の高い刃物は丈夫で、抜群の切れ味が持続することが特徴です。
変わらない伝統を守りながら、新しい物づくりに挑戦
「義定」では一般家庭で長く使えるものから、有名料亭の料理人などプロも愛用している特殊包丁まで幅広く製造。最近では、海外からの需要も高まり生産が追いつかないほどで、包丁の研ぎの注文も殺到しているそう。また包丁だけでなく、工芸品などを作る上で欠かせない道具に使用する刃物を作っていたり、祇園祭の鉾で使われる金具など、これまでさまざまに手がけてきました。
畳を切るために使う包丁
畳を切るために使う包丁
アウトドア用のナイフ
アウトドア用のナイフ
使い手それぞれの用途や使い方に合わせて材料や造り方も代わり、重さや硬さ、形も多種多様になります。中には、全国で悌市朗さんにしか作れない道具もあるといい、「よく切れる、使いやすいことが大事」とした上で、「包丁だけでなく、注文があればなんでもつくれるようにならないといけない」といいます。この柔軟性にこそ長年の知恵と経験が必要で、若い職人たちにとっても継承が難しいところです。

「義定」に入って18年になる吉浦さんは「まだまだできないこともある」としながらも、初めてのものをつくる時ほどやりがいを感じるのだそう。先日も車の部品を製造するために使う変わった形の刃物のオーダーがあったそう。難しい注文だったが満足のいくものができ、次の依頼に繋がった時には喜びを感じたと話してくれました。アウトドアが趣味ということもあり、アウトドアナイフや持ち運びしやすい手のひらサイズのミニマム包丁など、伝統の技術を活かしたこれまでにない商品も開発。販売すると即完売となる大反響に。「この先も『義定』を続けていくために、今までになかった新しいものを作りたい」と未来への想いを明かしてくれました。

勤めて約15年になる白井さんも、「言葉で伝えづらいところが多いので、数をこなし時間をかけながら習得していくしかない」と懸命に技術を継承しています。「何百年経っても包丁の魅力は切れること、そして生活の役に立つ実用性だと思っています。この無駄を削ぎ落としていく作業が好きで、失敗を重ねながらもひとつの工程の精度を上げ続けていくことに惹かれました。毎日同じことをしていても、精度が上がると技術も上がり、経験が積み重なっていくところが好きなんです」と、悌市朗さんの元で技術を磨きながら充実した日々を過ごしている様子。

京都で受け継がれてきた伝統の技術を活かしながら、時代に合わせて新たな挑戦も欠かさない「京之鍛冶師 義定」。この先も使い手に寄り添い、家庭から世界中の物作りまで、さまざまな場面で欠かせない刃物を造り続けています。
七条にある販売店
七条にある販売店
取材・文・撮影=大西健斗
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Each craft manufacturer showcased in "MEIHINCHO" boasts its own distinctive and innovative technology. For those interested in leveraging this craftwork technology for OEM or product development, please don't hesitate to reach out to us.