手作業による磨きから生まれる、鈍く銀色に輝く「京瓦」
社寺や町屋の屋根などで目にする美しい瓦。その中でも、焼く前に磨くことで重厚な光沢を放つことで知られる「京瓦」。現在、この「京瓦」の全工程を手仕事で行っているのは、浅田製瓦工場の京瓦鬼師・浅田晶久さんただひとりとなりました。
「京瓦」は鈍く銀色に輝くその艶が特徴です。これは粒子をそろえた良質な粘土で成形し、瓦の表面に手や顔が映り込むまで何度も磨いてから窯で焼成することにより生まれます。この「磨き」の工程によって撥水作用や強度も増し、機械では出せない手作業ならではの瓦の美しさが決まります。
また、瓦のほかにも、京都の住宅の玄関口などでよく見かける鍾馗像(疫病退散の神様)を京都で作っているのも浅田さん唯一人。「1300年以上続く、京瓦の技術を残したい」と、見極めにくい焼成温度を数値化するなど、安定して作り続けることができ、後継者に技術をしっかりと伝えるための取り組みも行っています。
温度記録計で毎回温度を測り、そのデータを参考に調整をしていく
近年はホテルや飲食店の壁材にも。1300年の伝統を次世代へ
瓦屋根の家が減った最近では、ホテルや飲食店で高級感を演出する壁材としての瓦を制作。また瓦のコースターやプランターのほか、3Dプリンターでさまざまなデザインの石膏型を作ってこれまでにないデザインの瓦を手がけるなど、伝統を受け継ぎつつ新しい試みも。
取材:新 拓也 撮影:森下 大喜 文:大西 健斗