logo
store
わたしの名品帖
store
instagram
contact
工芸レポート
兵庫県 多可郡多可町にある橋本裕司織布。
代表を務められるのは三代目の橋本裕司さん。先代の頃には「継いでくれとは言い難い」と言われたほど繊維業の景気が厳しい状況だった為、家業に好感を持てなかった橋本さん。
先代が病に倒れたことをきっかけに、28歳の頃家業に従事されたそうです。 繊維業界へ受動的に足を踏み入れたものの、承継を機にどんどん織物に魅力を感じ始め・・・。
苦手だった織物の勉強も理解が深まると面白く、修理や改造のために機械要素や電気系統にも学びの必要性を感じ幅が広がっていったそうです。
当時の中心であった下請け仕事が目減りしていたこともあり、独自の織物の模索に挑まれ、現在の橋本裕司織布の強みである織機の独自改良や織り方を開発されました。
三代目の橋本裕司さん
三代目の橋本裕司さん
昔ながらの織機で生まれるオリジナリティ
橋本裕司織布では所有するドビー織機によるドビー織物が主力です。
ドビー織物は、一般的にシンプルな幾何学模様の織物だと表現される事が多いですが、経糸の通し方や織り方を工夫する事でいろんな表情や触感を持つ生地を創る事ができます。弊社織機の特徴を生かした規格にする事で味のある生地を創る事ができる魅力を感じています。

橋本裕司織布では、現在では生産終了している40年前のレピア織機と50年前のシャットル織機を所有しており、味わい深い生地を織ることができます。織物は、上下に分かれた経糸の間に緯糸を入れ、ほぼ直角かつ立体的に交錯させて打ち込む事で出来る生地です。レピア織機はレピアという道具の先端で緯糸をつかんで進行させ、シャットル織機は、緯糸の管を取り付けたシャットルの往復運動で生地を織ります。どちらも織機の打ち込み機構が特徴的です。また、低速回転の織機で短納期は苦手ですが、弊社生地のふんわりした豊かな風合いには定評があります。
シャットル織機に使用されるシャットル
シャットル織機に使用されるシャットル
ドビー織機で生地を織る際には、ドビーカード(穴の空いている位置によって模様を自動的に織り込むように指示をするためのカード) を使用して織っていく
ドビー織機で生地を織る際には、ドビーカード(穴の空いている位置によって模様を自動的に織り込むように指示をするためのカード) を使用して織っていく
ドビーカードをつくる機械。各デザインごとにドビーカードをつくる
ドビーカードをつくる機械。各デザインごとにドビーカードをつくる
余白をいかした改造で独自の価値を見出す
“ここでしか織れない織物がある。”と語られる橋本さん。“例えば建物は構造物だけど、構造が変わると特徴が変わってくる。同じ織物でも経糸の曲りが大きかったりすると触感が全然違ってくる。” 特徴を活かし見た目にも綺麗な独自の織物に取り組まれています。織機を改造することで従来できなかったオリジナルのデザインも可能としています。最新の電子制御の織機は自動化技術で効率よく多機能で機械的不具合が少ない素晴らしさはありますが、新たに手を加える余白が殆どありません。橋本裕司織布の織機はメンテナンスに時間とお金がかかりますが、独自開発の部品や改造を施していく事で独特な風合いや価値を見出すことができるのです。
繊細なデザインと風合いが特徴的
繊細なデザインと風合いが特徴的
橋本さんが5年の歳月をかけて開発し特許庁の意匠権も取得した独自の「流風織り(りゅうふうおり)」の生地を中心に「HASHIMOTO Vintage」というファクトリーブランドも展開されています。
まるで風を織り込むようにふわりと織られた「通気性」「伸縮性」「軽量性」に長けた独自の生地で、ストレスなく着用・使用できる商品を製作。
橋本裕司織布では、昔ながらの織機をアレンジすることで独自の価値を生み出しています。
古いもの味わいとして次世代へ
低速織機では下請け仕事を受注できず、先進的な高速織機の導入を検討したことも・・・。 しかし、下請けでは採算があわないうえ同年に短時間の豪雨にあい工場が浸水し、新しいのを入れても壊れれば借金だけ残ってしまうと断念。冒頭でも述べた独自の織物を模索していくうちに織機が新しいか古いかではなく織物で勝負できないとダメだと思うようになったそうです。 そうしていくうちに工場を視察されたお客様が、織機のドビー装置を見て「オルゴールみたい、わたしはこっちの方が好き」と言って下さったり、工場のノコギリ屋根の構造を見て「これすごいですね」と言ってもらえたことなどが橋本さんの心に響いたそうです。
下請け仕事しか考えていなかった時は、“ボロい工場・ボロい織機と思っていたけど、それに価値があるとお客さんが教えてくれた。” と橋本さん。以前にも増して織機の部品をきれいに磨いたり、工場を念入りに掃除し機屋にはつきもののホコリや綿も全て取り払う心がけをされたとのこと。今あるもの・工場の佇まい自体にも価値を見出すようになったそうです。
“古い=悪いのではなく、設備を雑に扱ってたりするのが良くないだけ。ちゃんとメンテナンスをして綺麗に使うと、所有織機の特徴やゆっくり織れる事も利点として活かすことができる。
工場内の様子
工場内の様子
古い=汚いではなく古いものを大事に使っていることが味になるし、それを理解してくれる人が現れてくる時代になった”と語られる橋本さん。
手間暇をかけた成功の喜びはひとしお。“ある時は想像を超える良いものが開発でき、夜中の2時にウォー!てガッツポーズしました”と橋本さん。
世界へ販路を広げるべく、また若い人が挑戦したいと思える産業になるようにと、古き良き趣と独自性を強みに日々開発に取り組まれています。
取材:新 拓也 撮影:森下 大喜 文:下野 恵美子
橋本裕司織布
locationPin兵庫県
#織物-播州織
昔ながらの織機をさらに独自に改良し、ふんわりした豊かな風合いが特徴的な、ここでしか織れない織物をつくる橋本裕司織布。
最終更新日 : 2024/03/14
代表者
橋本裕司
創業年
1964年
従業員
1
所在地
〒679-1114 兵庫県多可郡多可町中区岸上391
制作・商品開発を依頼する
「わたしの名品帖」で取り扱っている各工芸メーカーは、独自の光る技術を持っています。 そんな工芸品の技術力を活用したOEMや商品開発などをご検討のお客様はお気軽にご相談ください。
橋本裕司織布
locationPin兵庫県
#織物-播州織
昔ながらの織機をさらに独自に改良し、ふんわりした豊かな風合いが特徴的な、ここでしか織れない織物をつくる橋本裕司織布。
最終更新日 : 2024/03/14
代表者
橋本裕司
創業年
1964年
従業員
1
所在地
〒679-1114 兵庫県多可郡多可町中区岸上391
工芸レポート
兵庫県 多可郡多可町にある橋本裕司織布。
代表を務められるのは三代目の橋本裕司さん。先代の頃には「継いでくれとは言い難い」と言われたほど繊維業の景気が厳しい状況だった為、家業に好感を持てなかった橋本さん。
先代が病に倒れたことをきっかけに、28歳の頃家業に従事されたそうです。 繊維業界へ受動的に足を踏み入れたものの、承継を機にどんどん織物に魅力を感じ始め・・・。
苦手だった織物の勉強も理解が深まると面白く、修理や改造のために機械要素や電気系統にも学びの必要性を感じ幅が広がっていったそうです。
当時の中心であった下請け仕事が目減りしていたこともあり、独自の織物の模索に挑まれ、現在の橋本裕司織布の強みである織機の独自改良や織り方を開発されました。
三代目の橋本裕司さん
三代目の橋本裕司さん
昔ながらの織機で生まれるオリジナリティ
橋本裕司織布では所有するドビー織機によるドビー織物が主力です。
ドビー織物は、一般的にシンプルな幾何学模様の織物だと表現される事が多いですが、経糸の通し方や織り方を工夫する事でいろんな表情や触感を持つ生地を創る事ができます。弊社織機の特徴を生かした規格にする事で味のある生地を創る事ができる魅力を感じています。

橋本裕司織布では、現在では生産終了している40年前のレピア織機と50年前のシャットル織機を所有しており、味わい深い生地を織ることができます。織物は、上下に分かれた経糸の間に緯糸を入れ、ほぼ直角かつ立体的に交錯させて打ち込む事で出来る生地です。レピア織機はレピアという道具の先端で緯糸をつかんで進行させ、シャットル織機は、緯糸の管を取り付けたシャットルの往復運動で生地を織ります。どちらも織機の打ち込み機構が特徴的です。また、低速回転の織機で短納期は苦手ですが、弊社生地のふんわりした豊かな風合いには定評があります。
シャットル織機に使用されるシャットル
シャットル織機に使用されるシャットル
ドビー織機で生地を織る際には、ドビーカード(穴の空いている位置によって模様を自動的に織り込むように指示をするためのカード) を使用して織っていく
ドビー織機で生地を織る際には、ドビーカード(穴の空いている位置によって模様を自動的に織り込むように指示をするためのカード) を使用して織っていく
ドビーカードをつくる機械。各デザインごとにドビーカードをつくる
ドビーカードをつくる機械。各デザインごとにドビーカードをつくる
余白をいかした改造で独自の価値を見出す
“ここでしか織れない織物がある。”と語られる橋本さん。“例えば建物は構造物だけど、構造が変わると特徴が変わってくる。同じ織物でも経糸の曲りが大きかったりすると触感が全然違ってくる。” 特徴を活かし見た目にも綺麗な独自の織物に取り組まれています。織機を改造することで従来できなかったオリジナルのデザインも可能としています。最新の電子制御の織機は自動化技術で効率よく多機能で機械的不具合が少ない素晴らしさはありますが、新たに手を加える余白が殆どありません。橋本裕司織布の織機はメンテナンスに時間とお金がかかりますが、独自開発の部品や改造を施していく事で独特な風合いや価値を見出すことができるのです。
繊細なデザインと風合いが特徴的
繊細なデザインと風合いが特徴的
橋本さんが5年の歳月をかけて開発し特許庁の意匠権も取得した独自の「流風織り(りゅうふうおり)」の生地を中心に「HASHIMOTO Vintage」というファクトリーブランドも展開されています。
まるで風を織り込むようにふわりと織られた「通気性」「伸縮性」「軽量性」に長けた独自の生地で、ストレスなく着用・使用できる商品を製作。
橋本裕司織布では、昔ながらの織機をアレンジすることで独自の価値を生み出しています。
古いもの味わいとして次世代へ
低速織機では下請け仕事を受注できず、先進的な高速織機の導入を検討したことも・・・。 しかし、下請けでは採算があわないうえ同年に短時間の豪雨にあい工場が浸水し、新しいのを入れても壊れれば借金だけ残ってしまうと断念。冒頭でも述べた独自の織物を模索していくうちに織機が新しいか古いかではなく織物で勝負できないとダメだと思うようになったそうです。 そうしていくうちに工場を視察されたお客様が、織機のドビー装置を見て「オルゴールみたい、わたしはこっちの方が好き」と言って下さったり、工場のノコギリ屋根の構造を見て「これすごいですね」と言ってもらえたことなどが橋本さんの心に響いたそうです。
下請け仕事しか考えていなかった時は、“ボロい工場・ボロい織機と思っていたけど、それに価値があるとお客さんが教えてくれた。” と橋本さん。以前にも増して織機の部品をきれいに磨いたり、工場を念入りに掃除し機屋にはつきもののホコリや綿も全て取り払う心がけをされたとのこと。今あるもの・工場の佇まい自体にも価値を見出すようになったそうです。
“古い=悪いのではなく、設備を雑に扱ってたりするのが良くないだけ。ちゃんとメンテナンスをして綺麗に使うと、所有織機の特徴やゆっくり織れる事も利点として活かすことができる。
工場内の様子
工場内の様子
古い=汚いではなく古いものを大事に使っていることが味になるし、それを理解してくれる人が現れてくる時代になった”と語られる橋本さん。
手間暇をかけた成功の喜びはひとしお。“ある時は想像を超える良いものが開発でき、夜中の2時にウォー!てガッツポーズしました”と橋本さん。
世界へ販路を広げるべく、また若い人が挑戦したいと思える産業になるようにと、古き良き趣と独自性を強みに日々開発に取り組まれています。
取材:新 拓也 撮影:森下 大喜 文:下野 恵美子
工芸品
制作・商品開発を依頼する
「わたしの名品帖」で取り扱っている各工芸メーカーは、独自の光る技術を持っています。 そんな工芸品の技術力を活用したOEMや商品開発などをご検討のお客様はお気軽にご相談ください。