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工芸レポート
美濃焼の産地である岐阜県土岐市にて1900年頃開窯した丸直製陶所。
現在この窯を営むのは6代目の奥田 将高さんです。 短大を卒業後多治見市の陶器商社で5年勤務の後、27歳頃から家業の丸直製陶所で修行をはじめられました。 丸直製陶所の最大の特徴は、光にかざすと中に注いだ液体が透き通るほど薄く軽い磁器づくり。 創業当時ヨーロッパでは薄い磁器が好まれていた事から輸出用のティーカップなどの製造を手がけ今に至ります。
6代目の奥田 将高さん
6代目の奥田 将高さん
技術と手間ひまの賜物、透き通る薄さのエッグシェル
丸直製陶所の誇る薄い磁器は、江戸時代から明治にかけて作られた輸出向けの食器の中でも特に技術の域を極め、卵の殻のように薄い上に、丈夫な物を“卵殻手”と言い、西欧人から“エッグシェル”と絶賛を博しました。現在同タイプの磁器を製作しているのは、丸直製陶所を含め2件。
素焼きの状態では少し力を入れるだけで割れるほどで、わずか1~2mmの薄さ。
例えば日本酒を注げば透けた器ごしに水面のゆらぎを感じられ風情豊かに、飲み口も口当たりが良くまろやかに味わうことができます。
長年使いこまれたコテで極限まで器を薄くしていく。
長年使いこまれたコテで極限まで器を薄くしていく。
薄さを維持するためには、技術も時間も要し、苦労することもあるそうです。
付近の山で採取できていた原料の土が減少傾向のため、他地域から土を仕入れるということもあり、その都度変わる土の粘土質に合わせて成形用のコテを細やかに調整しながら対応してきたとのこと。
また釉薬をかける際、一般的な磁器は一気に施すことができるが、薄すぎるが故にいっぺんに吸水・付着できないため、中面と外面を片方ずつ施す必要があるそうです。
窯に入れるまで最短でも約2ヶ月を要し、技術と手間ひまをかけ作陶されています。
釉薬をかける際は、中面と片面を片方ずつ慎重にかけていく。
釉薬をかける際は、中面と片面を片方ずつ慎重にかけていく。
繊細な絵柄を可能にする銅板染付
模様のついた和紙を貼り付け転写して器に模様をつける「銅板染付」という技法を用いていることも特徴です。模様の出方や色の濃淡の違いも多少あり、その風合いが器の魅力をより高めています。
また転写では、非常に細かく繊細な柄も施すこともできます。
中にはまるで写真のように人物を染付しているものもあり、細やかな絵柄にも対応可能。
絵柄の染付は、①銅板に柄を描きエッチング②銅板に絵具をつけて和紙に版画③器を700度で焼成する際に、高温により生地が貼り付けた和紙の水を吸うことを利用して転写します。
紙は代々美濃和紙を使用。
転写後もう一度釉薬を塗り1300度で焼きあげるそうです。
中国やベトナムでも同技法を模倣した製品が見られますが、粗雑さが目立ち、繊細な仕上げの難しさや丸直製陶所の技術の高さは顕著です。
転写用の和紙
転写用の和紙
器に貼り付け、和紙をはがすと器に模様が転写される。
器に貼り付け、和紙をはがすと器に模様が転写される。
こちらは底面に人物を転写した器。透かすと人物が浮かび上がる。
こちらは底面に人物を転写した器。透かすと人物が浮かび上がる。
高度な技で世界に先駆ける新たな製品づくりを・・・
奥田さんは、長らく主力商品であった140年前から続くカップなどの食器のみならず、喜ばれる商品づくりに考えを巡らせ、現在は酒器を新しく作っている最中です。
“弊社の商品のミソは、薄いこともそうだけど、作る上で気をつけている部分は飲み口”と語られる奥田さんは薄さを活かした技法で理想的な飲み口を追求されています。“焼く前は飲み口が真っ直ぐの状態だけど、焼き上がったときにちょっと開くようにしている。これは重さと口の厚みを胴体に比べてほんの数ミリ小さくする。それによって焼き上げていく過程で自重によって少し開きができる。”
薄さの特性と技術が可能にしている口当たりの良い器を生み出されています。
当初より主要販路であったヨーロッパで開催された「メゾン・エ・オブジェ」に出向いた際には、日本製の質の高さを実感されると同時に、追随する世界各国の勢いを受け、既出ではなく新しく質の良い商品づくりの必要性に駆り立てられたそうです。
昔ながらの定番に加えて新たな商品企画にも積極的に取り組まれています。
“お客さんから買ってよかったと手紙をいただいたり、実際に手に取られた際に“軽い!”と驚いた顔をみたりすると一番嬉しい”と奥田さん。
“最近考えているのはサステナブル。せっかく買っていただいたのなら大事に使っていただきたいので、割れた商品を金継ぎして、またずっと使っていただけるような取り組みもしたい”
世界に先駆けた新たな商品づくり・新時代の持続可能な仕組み作りに意気込まれています。
取材:新 拓也 写真:森下 大喜 文:下野恵美子
丸直製陶所
locationPin岐阜県
#陶磁器-美濃焼
丸直製陶所は全国に2件しか製作していない、エッグシェルと呼ばれる薄い磁器づくりと銅板染付と呼ばれる絵付け方法が特徴の製陶所です。
最終更新日 : 2024/02/17
代表者
奥田 将高
創業年
1900年
従業員
3
所在地
〒509-5301 岐阜県土岐市妻木町116
制作・商品開発を依頼する
「わたしの名品帖」で取り扱っている各工芸メーカーは、独自の光る技術を持っています。 そんな工芸品の技術力を活用したOEMや商品開発などをご検討のお客様はお気軽にご相談ください。
丸直製陶所
locationPin岐阜県
#陶磁器-美濃焼
丸直製陶所は全国に2件しか製作していない、エッグシェルと呼ばれる薄い磁器づくりと銅板染付と呼ばれる絵付け方法が特徴の製陶所です。
最終更新日 : 2024/02/17
代表者
奥田 将高
創業年
1900年
従業員
3
所在地
〒509-5301 岐阜県土岐市妻木町116
工芸レポート
美濃焼の産地である岐阜県土岐市にて1900年頃開窯した丸直製陶所。
現在この窯を営むのは6代目の奥田 将高さんです。 短大を卒業後多治見市の陶器商社で5年勤務の後、27歳頃から家業の丸直製陶所で修行をはじめられました。 丸直製陶所の最大の特徴は、光にかざすと中に注いだ液体が透き通るほど薄く軽い磁器づくり。 創業当時ヨーロッパでは薄い磁器が好まれていた事から輸出用のティーカップなどの製造を手がけ今に至ります。
6代目の奥田 将高さん
6代目の奥田 将高さん
技術と手間ひまの賜物、透き通る薄さのエッグシェル
丸直製陶所の誇る薄い磁器は、江戸時代から明治にかけて作られた輸出向けの食器の中でも特に技術の域を極め、卵の殻のように薄い上に、丈夫な物を“卵殻手”と言い、西欧人から“エッグシェル”と絶賛を博しました。現在同タイプの磁器を製作しているのは、丸直製陶所を含め2件。
素焼きの状態では少し力を入れるだけで割れるほどで、わずか1~2mmの薄さ。
例えば日本酒を注げば透けた器ごしに水面のゆらぎを感じられ風情豊かに、飲み口も口当たりが良くまろやかに味わうことができます。
長年使いこまれたコテで極限まで器を薄くしていく。
長年使いこまれたコテで極限まで器を薄くしていく。
薄さを維持するためには、技術も時間も要し、苦労することもあるそうです。
付近の山で採取できていた原料の土が減少傾向のため、他地域から土を仕入れるということもあり、その都度変わる土の粘土質に合わせて成形用のコテを細やかに調整しながら対応してきたとのこと。
また釉薬をかける際、一般的な磁器は一気に施すことができるが、薄すぎるが故にいっぺんに吸水・付着できないため、中面と外面を片方ずつ施す必要があるそうです。
窯に入れるまで最短でも約2ヶ月を要し、技術と手間ひまをかけ作陶されています。
釉薬をかける際は、中面と片面を片方ずつ慎重にかけていく。
釉薬をかける際は、中面と片面を片方ずつ慎重にかけていく。
繊細な絵柄を可能にする銅板染付
模様のついた和紙を貼り付け転写して器に模様をつける「銅板染付」という技法を用いていることも特徴です。模様の出方や色の濃淡の違いも多少あり、その風合いが器の魅力をより高めています。
また転写では、非常に細かく繊細な柄も施すこともできます。
中にはまるで写真のように人物を染付しているものもあり、細やかな絵柄にも対応可能。
絵柄の染付は、①銅板に柄を描きエッチング②銅板に絵具をつけて和紙に版画③器を700度で焼成する際に、高温により生地が貼り付けた和紙の水を吸うことを利用して転写します。
紙は代々美濃和紙を使用。
転写後もう一度釉薬を塗り1300度で焼きあげるそうです。
中国やベトナムでも同技法を模倣した製品が見られますが、粗雑さが目立ち、繊細な仕上げの難しさや丸直製陶所の技術の高さは顕著です。
転写用の和紙
転写用の和紙
器に貼り付け、和紙をはがすと器に模様が転写される。
器に貼り付け、和紙をはがすと器に模様が転写される。
こちらは底面に人物を転写した器。透かすと人物が浮かび上がる。
こちらは底面に人物を転写した器。透かすと人物が浮かび上がる。
高度な技で世界に先駆ける新たな製品づくりを・・・
奥田さんは、長らく主力商品であった140年前から続くカップなどの食器のみならず、喜ばれる商品づくりに考えを巡らせ、現在は酒器を新しく作っている最中です。
“弊社の商品のミソは、薄いこともそうだけど、作る上で気をつけている部分は飲み口”と語られる奥田さんは薄さを活かした技法で理想的な飲み口を追求されています。“焼く前は飲み口が真っ直ぐの状態だけど、焼き上がったときにちょっと開くようにしている。これは重さと口の厚みを胴体に比べてほんの数ミリ小さくする。それによって焼き上げていく過程で自重によって少し開きができる。”
薄さの特性と技術が可能にしている口当たりの良い器を生み出されています。
当初より主要販路であったヨーロッパで開催された「メゾン・エ・オブジェ」に出向いた際には、日本製の質の高さを実感されると同時に、追随する世界各国の勢いを受け、既出ではなく新しく質の良い商品づくりの必要性に駆り立てられたそうです。
昔ながらの定番に加えて新たな商品企画にも積極的に取り組まれています。
“お客さんから買ってよかったと手紙をいただいたり、実際に手に取られた際に“軽い!”と驚いた顔をみたりすると一番嬉しい”と奥田さん。
“最近考えているのはサステナブル。せっかく買っていただいたのなら大事に使っていただきたいので、割れた商品を金継ぎして、またずっと使っていただけるような取り組みもしたい”
世界に先駆けた新たな商品づくり・新時代の持続可能な仕組み作りに意気込まれています。
取材:新 拓也 写真:森下 大喜 文:下野恵美子
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丸直製陶所
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